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『夏』と言えば「夏目ナナの引退」か、「田村ゆかりのライブ」だということは大和民族であれば周知の事実ですけど、今回は後者のことについて言及したいと思います。
田村ゆかり、っていう声優がいるんですけど、その人のライブに去年は忙しくて行けなかったんですが、今年はうんこを流し忘れて母親に叱られるくらいの余裕ができたんで行って来ました。 僕は今年で24になります。
ライブ当日の昼間もギリギリまで働き、「それじゃ、すいません、お先に失礼します」「ったく、どこ行くんだよ、この忙しいときに」「田村ゆかりっていう声優のライブです」「…誰?」「失礼します」という大変心温まる会話が繰り広げられ、バタバタしながら職場からそのままライブ会場に向かいました。
結局、到着したのが開演30分前。 勿論、とうに開場されており、ゾロゾロとお客さんが会場に入って行ってんですけど、それが、遠くから見ても会場周辺が異常な空気なんです。
そのライブツアー特注のピンク色のシャツに、「ゆかり道」とか背中に書かれたピンク色のハッピと、ピンク色のハチマキという、ピーコが見たら、泣いて嘔吐するくらい絶望的なファッションに身を包んだ人ばかりが会場周辺に。
 こんなん着た人ばっか
見ているこっちが心痛極まれるその集団を見た瞬間、僕の肉体を形成する細胞の8割が「ライブ行きたくない」と拒否反応を示し始め、「ライブ見るのやめますか、それとも人間やめますか」というキャッチコピーまで浮かんだんですけど、結局、人間を超越した存在になるためにピンク色の人たちと一緒に会場入り。
んで、会場はオールスタンディング形式。 2000人くらいいるんですけど、お客さんは皆、祭りの出店とかで売ってるようなピンク色に光る棒(サイリュームっていうらしいです)を高々と掲げ、「ゆーかりッ!ゆーかりッ!」と叫びながら振り回してます。もう帰っていいですか。
正直な話、僕は田村ゆかりの曲をそこそこ知ってるくらいで、コールとか踊りとか全然知らないんで、前の方に行ってもアレだし、ビール片手に会場のかなり後方に陣取ったんですけど、それなのに「田村ゆかりのファンクラブに入ってないやつは非国民」とか平気で言い出しそうな、お前たちはもっと前の方だろ、と言いたくなるようなピンクハッピの男たちに何故か囲まれてしまい、僕の四方八方がピンクの男だらけ。 その時の俺の状況を四字熟語で表すなら「敵中孤立」。
そんな四面楚歌の状況の中、いよいよ開演。 田村ゆかり登場、、、したっぽいんですけど、これが、あの、全然、見えない。 僕も身長はそこそこ普通にあるほうなのに、僕の前に立ってる男二人が余裕で180cmオーバー。 その背中の広いこと広いこと。 田村ゆかりどころか、ステージ自体があんまり見えない。 田村ゆかりが見えるのは、「ゴー!ゴー!」とか言いながら前の男たちが跳ねる前に一瞬しゃがむ時だけ。 結局、ライブ自体は3時間くらいあったんですけど、僕が田村ゆかりを見たのは12分くらいで、残りの2時間48分は曲に合わせて動く男たちの後頭部。どういうこと。
さらに、僕の周りのピンクの男たちは田村ゆかりの動きに合わせて光る警棒を振り回すんですけど、たまに僕の顔の横から肩越しに光る警棒が飛び出してくるわけで、これが大変ウザい。 しかも僕の後ろで、私生活でもピンクのハチマキがデフォっぽいアバンギャルドな御仁が、なにかしら奇声を上げながら光る警棒を上げ下げ上げ下げするんですけど、彼がエキサイティングしすぎて「あ゛〜ッ!あ゛〜ッ!」とか言いながら警棒振り回すから、時折僕の頭をビシビシかすめるんですわ。 さらにBメロのPPPHとかなると、もう、隣の「咲かせてみせます ゆかり道」とか書かれたピンク色のハッピ着た方が、気分がエレクトしすぎて僕に何度もショルダーチャージしてくるわ、僕の前のゴツい男なんて、ジャンプするたびに着地点がだんだんと後ろに下がってきて、何度も俺の足を踏む。 左右からはショルダーチャージ、前からはジャンプするたびに足を踏まれ、後ろからは警棒で叩かれる。これは何という罰ですか。
あと、凄く新鮮だったのが、ピンクの男たちの野太い『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』の声だけで、田村ゆかりの声どころか、バンドの全ての音がかき消されること。 「 会場の音響 < 『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』 」 の時点で何かが絶望的に間違ってるような気がしてならないんですけど、僕の周囲からの『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』以外何も聞こえない。 僕は、例え、田村ゆかりがあんまり見えなくても、足を踏まれまくろうと、肩をガシガシぶつけられようと、頭を警棒でハタかれようと、田村ゆかりの歌さえ聞ければよかったのに、それすら聞こえないという始末。 俺は、一体、何をしに…。 しかも、田村ゆかりが直接関係ないところであるギターソロでさえ、「ギュイーン ドリレデレレレ」お、このギターソロ、「ドリデデレレレレ」原曲と違うアレンジがされててカッコい『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』ちょ、聞こえな「デレレレ」『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』おい、お前ら「デレ」『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』静か「デ」『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』ちょ「レ」『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』お「」『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』あの、なにも、聞こえ、ない。 えっと、僕は野太い『ゆーかりッ!』を聞くために6000円払いました。何だこれ。
で、メロメロステッキのコーナー(田村ゆかりが魔法のステッキを振るうとその場にいる客は田村ゆかりにメロメロになってバタバタと倒れるみたいな、まぁ、なんというか、田村ゆかりを何も知らない人に普通にこれを説明すると何も言わずに精神科の予約をしてくれるようなコーナー)なんですけど。 田村ゆかりがステッキを振るうと、客席の前の方は当然、さらには会場のかなり後方の俺の周りでも「うわぁー」とか言いながらバタバタとピンク男が倒れていくんですわ。 挙句、僕の隣でメロメロになって倒れた男が「ふひゅ、ゆかりん、やるなぁ〜」とかブツブツ言いながら起き上がってたのを見て、ステッキなど使わずに僕の腰が砕けました。鳥肌立った。
あと僕は、目の前で起こっていることとは全く違うことを考える変なクセがあるんですけど、『ゆーかりッ!ゆーかりッ!』という声を聞いているうちに「もし、ステージに単にユーカリの木が一本置いてあって、ここにいる皆がその木に興奮して『ユーカリッ!ユーカリッ!』とか声を発してたら面白いなぁ・・・」とかニヤニヤトリップしてたら僕のお気に入りの一曲だった「惑星のランデブー」が終わってたときは心底驚愕しました。 あと、田村ゆかりの隣で踊ってるダンサーの気持ちになって「あー、ヲタ共が私の踊りに魅了されてるわー。しっかし、ダンサーになったのはいいけど、親に『田村ゆかりのツアーダンサーになった』なんて言えないし………。 っていうかー。田村ゆかりより私の方がダンス上手いし、顔もいいし、べ、別に、あんなアニメ声くらい私だって出せるんだからねっ! あー売れたい」とか考えてたら数曲終わってた。何やってんの俺。
それと、アンコールの時に「アンコール!アンコール!」って皆言ってるとき「コール・アン」って言ってるように聞こえてきて、途中からコールマンのことを考えてた。 あと、「アンコールじゃなくって、さりげなく『マンホール』って言っても誰も気がつかないだろうな。『サンポール』もOKかな。『アルコール』は余裕。『ダンスホール』はちょっと無理か。『マンコ売る』は意外にいける。『シンガポール』は絶対無理だな。」とか考えてたらアンコール一曲目終わってた。金をドブに捨ててる。ザブザブ捨ててる。
ライブ後半、「Honey moon」「惑星のランデブー」と、アップテンポの名曲が続いたあと、「fancy baby doll」のイントロが流れた時に、隣の男が「グヘッ、ここで3曲続けてとは!! 身体がもたんよグヘッ」とか言い出したときは、超局地的に隕石落ちろって思った。
ライブを締めくくる最後の一曲は僕の知らないゆるーいバラードの曲。 会場のピンク男たちは一曲丸ごとそらで歌えてたんで、よく歌詞覚えてんな、とか思いながらボケーッとしてたら、曲の最後、会場が一体となった感動に田村ゆかりが「みんなが暖かくて…」と感極まって泣き出し、つられて僕の周りのピンク共も涙ぐんで鼻をすすったりしてたんですけど、皆と一つになるどころか曲そのものを知らずにボサッとしてた俺は、なんだかとても悪いことをしたような気がしたんですけど、あれは何ですか。
ライブ会場を出るとき、「…ゆかりん、ありがとう、ううっ、ありがとう」とか言いながら背中を丸めてグズグズ泣きながら歩いていたピンク男の一人が哀れ過ぎて笑った。
ということで、田村ゆかりは見えないし、曲は聞こえないし、足は踏まれるわ、警棒でハタかれるわ、周囲から鼻をつんざく面白い匂いはするわ、ライブの一曲目を知らなくてノリ遅れるわ、ラストの一曲知らなくて除け者になるわ、で色々と笑ったんで来年も行きます。(行くのかよ)(行くよ)
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